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21.Side.神楽 火事の夜

مؤلف: 桜立風
last update تاريخ النشر: 2026-06-26 10:52:05

「……契約妻っ?!」

「声がデカいぞ」

「だって……まさか3回もそんなこと繰り返すなんて思わなかったから」

アパート火災で紅を背負って出てきた俺は、京香が呼んでくれた救急車で病院に来た。

すぐに紅の処置をして、その後軽い火傷をした京香の手当てをしながら紅との関係を問い詰められ……しかたなく本当のことを話したところだ。

「……まぁ。出会っちゃっだんだから、仕方ないよな」

俺だって、紅でなければ3回目はなかったかもしれないと、最近思う。

ちょっといい女だと思った。

どこかミステリアスで、物事を見抜くような強いまなざしを、気づけば目で追っていた。

だが、契約結婚を匂わせたらすぐに乗ってきたから、これまでの女と同じだと思ったんだ。

……結局、知らぬ間に復讐をされていたところを見ると、やはり俺の目に狂いはなかったというわけだ。

「……私と結婚させられるの、そんなに嫌だったの?」

「別に京香が嫌だってわけじゃないが、院長の言う通りになりたくなかったんだよ」

「私とでも契約できたのに!1年で離婚してくれれば、お金なんかいらなかったよ?」

承諾も紹介もなく結婚して1年で離婚して、それを2回繰り返した
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    「……亮子って女友達じゃなかったわけ?」「彼女は急に仕事になってしまったようで……代わりを見つけてくれたみたいなんです」夜になって帰宅した神楽に予定の変更を伝えた。するとタイミングよく、窓の向こうで車が停まる音がする。神楽はカーテンの隙間から、やってくる人を確認しながら言う。「冷蔵庫、ほとんど減ってなかったぞ?」神楽に言われた通り、1日のほとんどをソファで横になって過ごした。水分を多めに取りながら……パックのトマトサラダとレトルトの鶏のおかゆを食べたが?「1人で1食しか食べてないんだから、そりゃ減りませんよ」「紅が行っちゃうと、食材が余って困るな……」「買いすぎです。それは神楽さんのミス」玄関のチャイムが鳴り、紅は荷物を手に玄関に向かう。不機嫌の塊と化した神楽が後からついてきた。「……紅、火事って聞いて驚いたよ」「ご心配をおかけして、ごめんなさい」やってきたのは芹沢専務だった。仕事で出張になってしまった亮子が、芹沢専務に私の災難を伝え、助けてやってくれと頼んだらしい。会ってから話そうと、神楽の家にいるとは話していなかった。だからきっと、ホテルでひとりぼっちで苦しんでいるとでも思ったのだろう。「遠慮しなくていいよ。使ってないマンションだから」ふと、背後で腕を組む神楽に目をやる芹沢専務。「紅のことは責任を持って私が面倒を見るので、ご心配なく」「いや、怪我の手当てもありますし、彼女は療養中です。明日には戻ってもらわないと」「手当てと療養中の見守りなら、うちの産業医に看護師を手配するよう伝えます。神楽先生には逐一、彼女の状態を伝えますのでご安心ください」「……っ!」紅は張り詰めた空気に気づかないふりをして靴をはいた。そんな彼女に手を貸す芹沢専務。「……わぁっ!びっくりした」ドアを開けようとしたところで、谷村先生に出くわした。「え……あれ、片桐さん……お出かけ?」「はい。……いろいろあって。谷村先生、仕事に復帰したら改めてご挨拶に行きます」その間、母のことをよろしく頼む、という意味で頭を下げる。「それはもちろん。じゃあ、あの……行ってらっしゃい、?」神楽の表情をチラ見しながら、困った顔で見送る谷村先生。とりあえずこちらの意図は伝わったようで安心した。「掃除も買い物もすべて手配したから。紅は主寝室ですぐに横になるとい

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    「……契約妻っ?!」「声がデカいぞ」「だって……まさか3回もそんなこと繰り返すなんて思わなかったから」アパート火災で紅を背負って出てきた俺は、京香が呼んでくれた救急車で病院に来た。すぐに紅の処置をして、その後軽い火傷をした京香の手当てをしながら紅との関係を問い詰められ……しかたなく本当のことを話したところだ。「……まぁ。出会っちゃっだんだから、仕方ないよな」俺だって、紅でなければ3回目はなかったかもしれないと、最近思う。ちょっといい女だと思った。どこかミステリアスで、物事を見抜くような強いまなざしを、気づけば目で追っていた。だが、契約結婚を匂わせたらすぐに乗ってきたから、これまでの女と同じだと思ったんだ。……結局、知らぬ間に復讐をされていたところを見ると、やはり俺の目に狂いはなかったというわけだ。「……私と結婚させられるの、そんなに嫌だったの?」「別に京香が嫌だってわけじゃないが、院長の言う通りになりたくなかったんだよ」「私とでも契約できたのに!1年で離婚してくれれば、お金なんかいらなかったよ?」承諾も紹介もなく結婚して1年で離婚して、それを2回繰り返した時、継父である院長は俺に言った。3回目は谷村京香と結婚しろ、と。「悪評がつかないように京香を使いたかったんだろ。別に俺を守るためじゃなく、病院の評判を気にしてのことだ」「だとしてもさ。言い方悪いけど、片桐さんの戸籍に離婚っていう傷をつけたのよ?これから普通に結婚していくだろう人に……」「趣旨は全部説明した。彼女もこの先結婚するつもりはなくて、戸籍が傷つくとか気にしてなかったんだよ?」……だとしても、と食い下がる京香に言ってやる。「京香こそ、戸籍に傷をつけたくないだろ?……颯真、帰ってくるみたいだしな」「……その件についてはノーコメント」「怒ってやれよ、思いっきり。どうして自分を連れて行かなかったんだ、って」京香とは同い年で、実家は院長の邸宅のごく近所だった。母の連れ子としてあの家に住むようになってから、よく顔を合わせるようになった幼なじみだ。 品行方正で、いわゆるお嬢様学校に進んだ彼女は院長のお気に入りで、両親と一緒によく家に呼んでは、俺や颯真に相手をさせた。そんなことから、京香は兄妹のような間柄で家族に近い。「付き合ってたんだろ?颯真と」「……いいよもう、そ

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  • クズなハイスペ夫を改心させたのはもっとクズな私です   19.まさかの出来事

    「……この辺で、停めてください」 送ると言って聞かない神楽を置いてタクシーに乗り込み、少し遠回りして自宅アパートの近くで降りた。 送りオオカミを心配したわけではないが、神楽に住まいを知られたら何かと面倒だ。 「……あ、」 足取りも軽やかにアパートの敷地に入ると、少し先に女性が歩いているのが見えた。 「谷村先生……」 そっと駆け寄り、小声で声をかければ、驚いた表情で振り向く人。 「あら……今帰ったのね?偶然!」 「先生は……もしかしたら、」 デートかと思った。だってスカートをはいていたから。 「仕事帰りよ?!」 妙に張り切って言う様子に笑みがこぼれる。……まぁ、先生のプライベートに口を挟む気はないけれど。 ふと、約束の前に母に会いに行った分院で、神楽と話していた谷村先生の姿を思い出した。 爽やかで、清廉潔白な印象を与える谷村先生と神楽。 意外な取り合わせながら、とても親しく楽しそうだった。 おやすみなさいの挨拶をして、紅は自分の部屋に入る。 少しだけ揺れている視界……神楽と一緒だったわりに、ずいぶん飲んでしまったかな。 「……何がプロポーズする、よ?」 バスタブに入るのは諦めて、シャワーだけ浴びることにした。 服を脱ぎながら、目の前でタクシーの扉が閉まり、唖然とした表情の神楽を思い出す。 『よしっ!それじゃ俺も、君にプロポーズしようじゃないかっ!』 結婚したくなくて3回も契約結婚を繰り返したくせに、どうして芹沢専務のプロポーズに対抗したくなったのか…… 「……負けず嫌い発動か?」 神楽にはあんなふうに言ったが、男嫌いを克服するために、芹沢専務のプロポーズを受けるつもりなどない。 真剣な表情で結婚を匂わされ、これは困ったと思ったのは本当だが、退職したのは別の理由が大きかった。 父親が私の職場を知っていて、会社も私の父親が、トオキ屋の後継ぎだと知っていたから。 家族だからと、取引の仲介を頼まれるのが嫌だった。 父親にそんなことで頭を下げたくない。けれど私ではない社員が頭を下げ、取引が始まったら? 自分がトオキ屋の担当にさせられる可能性がある。だから会社を辞めた。 そこに……ほんのわずかでも、迷いなんてものは存在しなかった。 シャワーから出てTシャツとハーフパンツに着替え、素肌に化粧水を叩き込む。続けて塗り込む

  • クズなハイスペ夫を改心させたのはもっとクズな私です   18.神楽の話

    「話の内容と店があまりにもミスマッチじゃないか?」 神楽に真剣な表情で言われ、驚いた。 別の店に行こう誘われ、豚串と生ビールの美味しさは堪能したので、素直について行くことにする。 「言い訳をするわけじゃないが、あの頃の俺は荒れててな。多分、かなりの人に嫌な思いをさせたと思う」 次の店は半個室の落ち着いた店。 お酒を注文したところで、神楽が口を開いた。 「荒れていた理由は?」 当時の神楽は、男子高校生ながら、誰もが注目してしまうほどのビジュアルを兼ね備えていた。 取り巻きも多く、華やかで、全校生徒の憧れだったと思う。 そんな人がなぜ、心を荒らして安易に人を傷つけたのか、それが知りたかった。 「母親が、より良い生活を求めて父親と離婚して……俺を連れて医者の男と再婚した。12歳の時だ」 「噂は本当だったんですね?」 「噂になってたの?」 「はい。戻ってくる颯真さんという方が、院長の本当の息子だと」 神楽は少し笑って、ワインをひとくち飲んだ。 「母親に連れられて行った先に、確かに颯真がいたよ。ひとつ年下で、俺とはまったく違うタイプ」 「連れ子同士、ってことなんですね。成長過程は置いといて、2人とも医者になったのはすごいです」 「父親の考えだよ。だから母親は高校を卒業して家を出ようとした俺を許さなかった。……反抗するのも面倒で医者になったけど、学費は出してくれるし悪い話じゃなかったよな」 そう言いながら、心ここにあらず、といった様子の神楽。 「反抗してる最中だったんですね?高校時代は」 あの頃の神楽は、鋭利なナイフのような面が確かにあった。 関わる人を傷つけるのに、その綺麗な見た目が人を集めてしまう…… 「子供の頃からサッカーをやっててな。父親はチームのコーチだった。母親に言わせれば稼ぎが悪かったらしいが……俺にはいい父親だったんだ」 「本当は、離れたくなかった?」 「友達もたくさんいたし、子供ならではの話だけど、サッカー選手になりたいって夢もあった。けど……母親はそのすべてを突然奪ったんだよ」 言葉にはならない悲しみが伝わってくる。継父や連れ子の颯真との関係も、決して心安らぐものではなかったのだろう。 「わかりました」 「……は?」 紅は生ビールを2つ頼み、ドンッと神楽の

  • クズなハイスペ夫を改心させたのはもっとクズな私です   1.契約結婚

    「今夜の料理も美味いな」「本当ですか?嬉し……」「玉ねぎが入ってなきゃね。言わなかったっけ?俺、玉ねぎが苦手だって」ピリっと張りつめる空気……とても仲良し夫婦の夕食風景には見えない。射抜くように向けられた視線から逃れたくて、反射的に下を向いた。ガラスのダイニングテーブルは透明で……夫が足を組み替えたのが見える。「そうでしたね。……ごめんなさい」「いやいいよ。普通の男なら満足する味だ。……普通の男ならね?」頬杖をついて私に向ける視線は……確実に不愉快だと伝えている。「明日は必ず……満足していただけるように頑張ります。私、料理は得意なので、今度こそ」リベンジを誓う私を見つめ返

  • クズなハイスペ夫を改心させたのはもっとクズな私です   11.すべてバレバレ

    「事務全般の責任者を務めております、山中といいます」 「片桐紅です。よろしくお願いします」 履歴書を確認されているうちに、50代後半の男性が入ってきて、神楽に会釈して隣に座った。 「ええっと……採用でもう、決まりなんですよね?」 「そうですね。詳細は伝えた通りなので……あとはお願いします」 入れ替わるように立ち上がり、通りすがりに紅の肩をポンと叩く。 ……視線を感じるが、別に用はないので見上げたりしない。 その視線の意味を知るのは、この直後のことだった。 「片桐さんには、外科の病棟クラークとしてお仕事していただきます」 「病棟、クラーク……」 クラークと

  • クズなハイスペ夫を改心させたのはもっとクズな私です   10.面接

    意味深な指の動きと見下ろす視線の色気に気づいて……紅はパッと手を引っ込める。油断も隙もない、遊び人のかまってちゃんめ……「それでは午後、病院に伺いますのでよろしくお願いいたします」「あぁ……もし本院にいなかったら、絆ハートメディカルって、裏にある分院に来てくれ」「……あ、わかりました」玄関ドアを開けながら、今言われたことを心の中で繰り返す。絆ハートメディカル病院は、母が入院している病院だ。……まさか、二階堂総合病院の分院だったとは。コインロッカーにスーツケースを預け、定食チェーン店で朝食を食べることにする。目玉焼きをつつきながら、仕事はこれでほぼ決まったとして、住まいをどうす

  • クズなハイスペ夫を改心させたのはもっとクズな私です   9.翌朝のバトル

    「宿泊費は、朝食でいいから」 迷う様子を見せる紅に、神楽は腕を組みながら言う。 「私が、朝食を作るんですか?」 機嫌よくうなずきながら口元を緩めた神楽。 いつも思うが、笑うとホクロが際立って、妙に柔らかい表情になる。 「その方がいいだろ?お互いwin-winで。遠慮しなくていいぞ?」 「……朝食のリクエストなんて、しないですよね?」 「え……」 あぁ、この顔は和食を希望しているとわかる。たった1年でも、一緒に暮らした人の思考はわかるようになるらしい。 「リクエストなしでお願いします」 「……わかった」 意外と素直で、正面から顔を覗き込んでしまう。 「面接は明日の午後

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